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コンビニ人間:村田紗耶香著書のベストセラーを紐解く

今回は村田紗耶香著書のベストセラー「コンビニ人間」を紹介します。

この本は僕も意識を変えるきっかけとなった本なのでぜひ読んでいただきたいです。

 

 

本の概要

著書:村田紗耶香

発行:2016年

累計100万部突破の芥川賞作品

あらすじ

幼いころから他人とずれた感性を持ち、輪になじむことができていなかった主人公古倉恵子は、30代半ばであるにもかからず独身であることやアルバイトをしていることから他人からは心配されたり、変人と思われたりと「普通」というものに苦悩し続けて辛い日々を過ごします。そんな彼女の唯一の居場所であるコンビニの中では自分がマニュアル通りにすれば変人といわれることもなく、自分が必要とされていることに安堵を感じてどんどんとコンビニ店員という立場に依存し、気づけば18年もの間バイトを続けていました。そんな中で恵子は白羽という変人のコンビニバイトに出会います。彼はバイトとしては職務怠慢そのもので、すぐにバイトをクビになりますが、彼は恵子と同棲することを提案します。この同棲で白羽は借金している親族から身を隠すことができるし、恵子は同棲している男がいるという事実だけで周囲から心配されたり、変人として見られることもなくなるこの提案はどちらにとっても願ってもないチャンスだったのです。早速同棲を始めた恵子でしたがそれを知ったコンビニ店員たちは恵子と白羽を飲みに誘ったり二人の関係をからかうようになります。無機質で自分の居場所であったコンビニが姿を変えてしまったことを知った恵子はとうとうコンビニバイトを辞めてしまいます。自分の人生そのものと言っていいコンビニバイトを辞めた恵子は次第に生きる指標を失っていき、家で食べて寝るだけの生活になっていきますが、ある日ふらっとコンビニに立ち寄った恵子は無意識のうちにコンビニ店員としての本能が働いてしまいます。自分の居場所がここにあると恵子は再確認した恵子は再びコンビニの世界に足を踏み入れるのでした。

恵子の生きざま

恵子は幼いころから他人と”ずれている”のですが、どこがずれているのかやなぜずれているのかが分からないでいました。この感覚は年を重ねるにつれて薄くなっていくと思いますがとても重要な感性だと思いました。他人と違うことを一概に嫌うのではなく、ずれを明確にしてそこから自分の考えでそれと向き合っていくことが大切だと思いました。大人になっても恵子は他人とのずれに悩みを抱えていました。30代半ばなのにコンビニ店員で独身というのは世間一般の価値観から言えば普通ではないですが、結婚に意義を感じない恵子にとっては普通なのかもしれない、そんなことを考えながら読むと考えさせられることがとても多かったです。ラストシーンではコンビニ店員に戻る恵子の様子が描かれており恵子は「私は人間である以上にコンビニ店員なんです。人間としていびつでも、たとえ食べていけなくてのたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。私の細胞全部がコンビニのために存在しているんです」と言っており、これはまさに生き様そのものの発言でした。恵子は普通の”人間”ではないかもしれませんが模範的な”コンビニ店員”なのかもしれませんね

「普通」とは何か

この小説ではとにかく「普通」とは何かということに焦点が当てられていました。恵子が”世間一般から見て”変人といえることは明らかですが、その要素が自分にはないかと問われて否定できる読者はそう多くないと思います。また、恵子はコンビニ外では変人扱いされていますが、コンビニ内では仕事熱心なマニュアル人間として何とか馴染んでおり、普通は立場や環境によって変わりやすく正解を出すことができないのがますます「普通」というものの存在をややこしくしていました。決められた枠組みの中で生活をすることが幸せとも、枠から外れた人を糾弾することが正しいともいうことはできないのです。まさに他人の常識が誰かの非常識という感じで、恵子のことを一概に変人と決めつけたり、大多数の人間を普通という枠組みの中に入っていっると断言することは不可能だと思います。私はこのように考えましたがこの作品のいいところは明確な答えが出されておらず解釈の余地が無限にあることだと思います。

まとめ

いかがでしょうか。文章量に反比例してとても内容の濃い作品だったと思います。

不通について悩んでいる方やこのブログを見て気になった方はぜひ買って自分なりの考えを作ってみてください